「注文の多い料理店」のようなセレブのパーティに招かれた

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知り合いの大学教員からセレブのパーティに招かれた。もっとも、招かれるような身ではない。期待された役割は「料理が残るともったいないので、とにもかくにも食べまくってほしい」という任務だった。

約束の場所は、お茶の水にある巨大な建物である。会場は、敷地の奥深く厳重に隠された大部屋だ。

鉄筋とガラスばかりの近代建築の入口から、エレベーターに乗って約束の階に向かった。ドアが開いた。降りると、再び目の前にドアが現れた。しかし、廊下へ通じるドアノブは回らない。まったく動かない。鍵がかかっているようだった。

バーティ会場は、一本の廊下の中央にある。再びエレベーターに乗って一階へ戻り、廊下の反対側にあるエレベーターに乗り換えた。エレベーターのドアが開くと、ここにも廊下の入り口にドアがある。このドアノブも回らなかった。

招かれているのに、どうしてもパーティにたどり着けない。不思議でならないが、帰る訳にもいかない。「食べまくる」という大切な約束があったから。

一階に戻り、建物の守衛所に行った。事情を説明すると守衛は、鍵がかかっているはずはないのにな、と不思議がった。

守衛は鍵を持って、エレベーターに一緒に乗った。エレベーターのドアが開く、そして廊下に通じるドアが現れた。守衛は、ドアノブに手をふれると、いとも簡単に扉を開けてしまった。魔法のように見えて、とても驚いた。

守衛が言った。

「ドアノブはもともと回りません。この扉は、押せば開きます」

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守衛にお礼を言って、廊下を歩いた。セレブのパーティが行われいる部屋はすぐに分かった。会場の扉は開かれていた。多くの人たちで賑わうなかに入ると、にこやかに歓迎された。町おこし研究をしている紳士が、声をかけてくれた。

「やあやあ、お待ちしていましたよ。こんにちは。今年もどうぞよろしく」

木村邦彦

メディア関連で編集制作、ライターなどしています。(さらに詳しい自己紹介