
建物の屋上から人がぶら下がっている!
23日の日中にサンタがいた
三連休初日の2016年12月23日。夫婦で東京某所を散歩をしていると、妻が突然、驚いて声を上げた。そして、目の前のマンションを指さしました。
赤い服を着た人物が、屋上からハシゴをおろし、5階付近で「ふらーん」としている!

赤い服を着てさえいれば、よそのお宅に侵入しても大目に見てもらえるとでも思っているのでしょうか!
一瞬ぎょっとしたものの、よく見ればでっかい人形でした。

サンタの屈折した姿は、どこか物寂しい
泥棒や強盗と見分けがつかないサンタの背中からは、苦悩を感じさせます。
ガスと電気が行き届いた都市生活では、暖炉と煙突のある家を、めったに見かけません。煙突があったとしても、よそのお家に忍び込んでよいわけありません。警察は容赦してくれないでしょう。
あれ、ところで、23日にサンタは仕事をするものなの?
サンタのモデルは教父ニコラオス
旧約・新約聖書いずれにも、サンタクロースなる人物は登場しません。かれは誰なのでしょう?
サンタのモデルは、4世紀頃の教父ニコラオス(あるいはミラのニコラオス、ミラの聖ニコラオ)と考えられています[1]。

主教の祭服を着た姿で描かれた聖ニコラオスのイコン(シナイ山の聖カタリナ修道院)[2]
この教父には、貧しい家庭に金貨をひそかに投げ入れたという言い伝えがあります。まるで、西洋版ねずみこぞう伝説ですね。投げ入れた金貨が靴下のなかに入ったので、プレゼントを靴下に入れる習慣が生まれたと言われます。
そして、煙突とサンタのイメージは、さらに時代を下り19世紀に生まれました。ニコラウスを物語る詩の演出がはじまりです。クリスマスの主役はイエスではなく、実は聖ニコラウスを慕うお祭りにも思えてきます。
イエスの誕生日にしても、 3世はじめまでは、1月6日だったり、5月20日だったりとまちまちでした[3]。12月25日になったのは、4世紀になってからで、古代ペルシャの宗教ミトラ教の冬至節から転化したという説があります。
クリスマスは進化する
サンタもクリスマスも、雪だるま式に伝説が付け加ってできたと言えそうです。
かくして、クリスマスの二日前にマンションの壁にしがみつき、窓から侵入しようとする教父ニコラオス(サンタ)も、新しいレジェンドとなるでしょう。そういえば、近年、クリスマスが近くになると、壁にハシゴをかけたサンタ人形を数多く見かけるようになりました。煙突がないので、現代のサンタは窓から侵入せざるを得ないのです。
私たちは、常に時代の目撃者。クリスマスは、困難な仕事をやり遂げたサンタクロースの仕事をねぎう日。ねずみこぞうサンタの仕事をお祝いしましょう。

クリスマスは進化する物語。
【脚注】
- サンタクロース – Wikipedia、閲覧日:2016年12月23日
「ある時ニコラウスは、貧しさのあまり三人の娘を身売りしなければならなくなる家族の存在を知った。ニコラウスは真夜中にその家を訪れ、窓から金貨を投げ入れた。このとき暖炉には靴下が下げられていており、金貨はその靴下の中に入ったという。この金貨のおかげで家族は娘の身売りを避けられた」という逸話が残されている。この逸話が由来となり、「夜中に家に入って、靴下の中にプレゼントを入れる」という、今日におけるサンタクロースの伝承が生まれている。また、ニコラウスの遺骸はイタリア南部の都市であるバーリに移されたとも言われている。 煙突から入ることになったのは1822年にアメリカの学者クレメント・クラーク・ムーア(英語版)がフィンランドの言い伝えを伝承した「聖ニクラウスの訪(おとな)い」(英語)という詩「キラ星のなか、屋根から降るのは/小さい蹄の立てる爪音/引っこめ振り向いて見ると/聖なるニコラウス煙突からどすん」を書いたからと考えられる。
- Reproduction of a painting that is in the public domain because of its age ↩
- 『哲学事典』平凡社、1971年 p.378 ↩