近所の八百屋さん
撮影:筆者

仕事が夜遅くに終わり、買い物はスーパーマーケットで済ますことが多い。だけど本当なら、日中に、近所の八百屋で買い物をしたい。モノは安いし、地域経済にお金を落とす意義もある。だが実は、他にも理由がある。この八百屋にいる看板娘に会うことが、ひそかな楽しみなのだ。在宅仕事で家にいるときは、こおどりしながら、会いに行く。

この店は、お昼過ぎから開く。看板娘は、果物や野菜に囲まれ、お年寄りニャンコのようにのんびり座っている。この日ぼくは、ジャガイモ三袋と、グレープフルーツを三つを手にとった。

ジャガイモ
「男しゃく」とあるが、実はメークインであった

レジでこれらを差し出すと、彼女はこう言うのだった。

「ジャガイモの袋が三つ。グレープフルーツも三つ。ジャガイモの値段はいくらだったかしら。あら、シイタケがないわね」

看板娘は、計算がめっぽう苦手だ。野菜の値段を覚えていたためしがない。だいいち、どうしてシイタケの名前が飛び出してくるのか、ぼくには分からなかった。だけど、彼女はとてもキュートなので、ついつい大目に見てしまう。

ぼくは「ジャガイモは一袋100円、グレープフルーツは三コで200円」と勘定し、「あわせて、500円です。シイタケは買ってないよ」と言った。彼女は「あらまあ、いやね」と恥ずかしそうにするのだった。

今月になって、ジャガイモの値段が高くなったと肌で感じる。農林水産省も先月、野菜の卸値見通しで、4月は二割以上高くなると予測していた。実際、値段は高騰している。近所のスーパーマーケットの相場は、三つ入りの一袋が180円ほどだ。しかし、この近所の小さな八百屋では、半値ちかくで扱っている。店主のおじいさんが早朝に市場で仕入れ、おばあさんがお昼から売っている。若干、ジャガイモの芽が出ているのはご愛敬だ。シンプルな仕組みだけど、この小売り店の存在は、節約を強いられる家計にはとてもありがたい。

じゃが玉
我が家の野菜ストッカー
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【脚注】
ジャガイモやサトイモ高値:日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO99072720Q6A330C1QM8000/


木村邦彦

法政大学文学部哲学科卒業。書籍編集、業界紙記者を経て編集、ライターなどをしています。(さらに詳しい自己紹介